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2008年11月11日
柳宗悦との出会い

長枝さんの話が出てきたから、そのことについて話してみたい。
奈良の日吉館は面白いところで、
会津八一など古代・古美術・文学研究をした人の定宿。
私が泊まった時は、若い学生がごろ寝で重なるようにして寝ていた。
そこに泊まっているうちに武蔵野美大の長枝さんと東京芸大の三井さんと仲がよくなり、
一緒に奈良の寺々を巡り歩いた。
そして別れの時、長枝さんに予定のない旅立ったらついでに横浜の家に寄るように誘われた。
奈良京都で二ヶ月はちょっと長かったので、新潟の良寛さんを訪ねようと計画を変更した。

それで、鎌倉の藍田先生のお宅へ一保堂のお茶と俵屋吉富の雲龍を買って、ご挨拶に寄った。
一泊させてもらい良寛を訪ねる話をしたら、新潟大の加藤僖一先生を紹介していただいた。
新潟では加藤先生に良寛の作品が見れるところを教えていただき、
福岡出身の学生を紹介してくれて、彼の下宿で一泊するように勧めてくれた。
良寛記念館や会津八一の住まいだった記念館も訪ねることが出来た。
面白かったのは、通りに面した佐久間書店の看板が棟方志功の書で、
例のごとく華やかな草花の彩色が施してあって、見応えのあるものだった。

話は前後するが、
新潟へ行く前に長枝さんの家を訪ねた。
お母さんとの二人住まいで、調度品が今まで見たことの独特の雰囲気を持っていた。
お聞きするとお母さんは染色家の芹沢銈介の工房で働いておられた。
柳宗悦の民芸運動の中心的存在で制作していた、芹沢の傍での暮らしは、
塵箱から箒にいたるまで丁寧に目を通したものが使われていた。
その何ともいえない空気に一遍で魅せられてしまった。
食器棚の美しさは目を見張るものがあった。

旅から帰って父の本棚を覗くと、何と柳宗悦選集が全巻揃っていた。
それをむさぼる様に読み、すっかり宗悦に心酔してしまった。
面白かったのは書のくだり、
王羲之よりも中岳霊廟碑の方が素晴らしいと書論を展開していた。
王羲之をたいして評価しないことに驚き、その様な見方に世の中が一変したように感じた。
王羲之の字に面白さを感じないまま、
そのうち分かるようになるかなと思って学んでいたので、無理することはないと納得した。
一つには「茶の美」を読んで、茶の批判に痛快な面白さを感じたので、
書も当たっていると思えたからだ。

この柳宗悦との出会いが、私の書の道が大きく方向を変えることになった。
by mteisi | 2008-11-12 01:52 | 書について


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