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懐風藻22
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望雪
 正五位上紀朝臣古麻呂

無爲聖徳重寸陰 有道神功輕球琳 垂拱端座惜歳暮 披軒褰簾望遙岑
浮雲靉靆縈巌岫 驚颷蕭瑟響庭林 落雪霏霏一嶺白 斜日黯黯半山金
柳絮未飛蝶先舞 梅芳猶遅花早臨 夢裏鈞天尚易涌 松下清風信難斟 

雪を望む

無爲の聖徳寸陰を重んじ 有道の神功球琳を輕んず 垂拱端座して歳暮を惜しみ軒を披き簾を褰げて遙岑を望む 
浮雲靉靆として巌岫を縈り 驚颷蕭瑟として庭林に響く 落雪霏霏として一嶺白く 斜日黯黯として半山金なり
柳絮いまだ飛ばず蝶まづ舞ひ 梅芳なほ遅く花早く臨む 夢裏の鈞天なほ涌き易く 松下の清風信に斟みがたし

無爲自然の政治をなさる盛徳の君は時を惜しまれ、道を守り功業多い賢君は美玉など目にもとめない。ゆったりと過ごし歳月の暮れゆくのを惜しみ、窓を開き簾をまきあげて遙かな峰を眺める。
浮き雲は霧りたなびいて巌のほら穴をとりまき、冬の突風は物さびしく庭の林にとよもしている。降りしきる雪に山はすっかり白くなり、夕日はかげり峰の片側は金色に輝く。
柳の綿はまだ飛ばないがまず雪が舞い、梅の香りはないものの枯木に雪が開いた。夢での天上の楽の想像にかたくはないが、松に雪での清風はそうそう逢えるものではない。
by mteisi | 2013-02-04 06:12 | 懐風藻


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