秋日於長王宅宴新羅客
正五位下図書頭吉田連宜
西使言帰日 南登餞送秋 人随蜀星遠 驂帯断雲浮
一去殊帰国 万里絶風牛 未尽新知趣 還作飛乖愁
秋日長王の宅において新羅の客えお宴す
西使ここに帰る日 南登餞送の秋 人は蜀星の遠きに随ひ 驂は断雲の浮べるを帯ぶ
一去帰国を殊にし 万里風牛を絶つ いまだ新知の趣きを尽さず かえって飛乖の愁ひを作す
西方新羅の使者は今帰途につこうとする。長屋王の南堂で秋の一日送別の宴を開いた。客は異国の星空の彼方に去っていき、馬もちぎれ雲の彼方に消えて行く。一たび別れればそれそれ国が異なるのだ。万里のへだたり交通の手だてもない。新しい友として、情誼もつくしきれぬまま、それゆえか場釣りの愁いはひとしおである。