寄題朱元晦武夷精舎
陸游
身閑剩覺溪山好 心静尤知日月長 天下蒼生未蘇息 憂公遂與世相忘
朱元晦の武夷精舎に寄題す
陸游
身閑なれば剩だ覺ゆ溪山の好きを 心静かなれば尤も知る日月の長きを 天下の蒼生未だ蘇息せず 憂ふ公の遂に世と相忘れんことを
君は肉体的に苦労がないから、谷川や山々の好もしさをひたすら心に感じ、精神的にも落ち着いているから、過ぎゆく日月の長いことをことのほか味わっておられることであろう。しかし天下の人民は、長い苦しみから、まだ息をふきかえしてはいないのだ。君がこのまま世の中のことを忘れられる存在となってしまいはせぬかと、私には心配でならない。