或本從藤原宮遷于寧樂宮時歌
天皇乃 御命畏美 柔備尒之 家乎擇 隱國乃 泊瀨乃川尒 舼浮而 吾行河乃 川隈之 八十阿不落 萬段 顧爲乍 玉鉾乃 道行晩 青丹𠮷 楢乃京師乃 佐保川尒 伊去至而 我宿有 衣乃上從 朝月夜 清尒見者 𣑥乃穂尒 夜之霜落 磐床等 川之氷凝 冷夜乎 息言無久 通乍 作家尒 千代二手尒 座多公與 吾毛通武
大君の もこと畏み にきびにし 家をおき 隱り國の 泊瀬の川に 舟浮けて 吾が行く川の 川隈の やそ隈おちず よろづ度 かへりみしつつ 玉鉾の 道行きくらし 青丹よし 奈良のみやこの 佐保川に い行き至りて 我がねたる 衣の上ゆ 朝月夜 清かに見れば 𣑥の穂に 夜の霜ふり 磐床と 川の氷凝(ひこご)り 寒き夜を いこふ事無く 通ひつつ 作れる家に 千代までも 座せ大君よ 吾も通はむ
澤瀉久孝著「万葉集注釈」1より