六之三
嗟來桑戸乎、嗟來桑戸乎、而已反其真、而我猶爲人猗、子貢趨而進曰、敢問、臨尸而歌禮乎、二人相視笑曰、是悪知禮意、
嗟来、桑戸よ、嗟来、桑戸よ。而は已に其の真に反る。而して我れは猶お入りたりと。子貢、趨りて進みて曰わく、敢えて問う、尸に臨みて歌うは礼かと。二人相い視て笑いて曰わく、是れ悪くんぞ礼の意を知らんやと。
「ああ桑戸よ、ああ桑戸よ。君はもはや君の真実へとたち帰った。われわれはまだ人間のままだ。」子貢は小走りに小走りに進み出て、「おたずねしますが、屍の前で歌うのは礼のきまりでしょうか。」とたずねた。二人は顔を見あわせて笑うと、「この男には礼の意味はわからないよ、」とつぶやいた。