2008年11月3日
何紹基

清の時代に何紹基という人がいた。知らずにとても影響を受けていた。

私に強い影響を与えたのが津金寉仙先生。戦後の日展で活躍した書家で、父の師でもあった先生の書「定外禪」と「大器晩成」は、見上げるといつもそこにあった。変わった変な字はじっと私を見下ろしていた。
書の道に入った時、亡くなられた先生の後、殿村藍田先生に父が師事したので私も藍田先生に学ぶこととなった。日展や毎日展など中央の展覧会では藍田調で出品し、地方展や個展では寉仙調を追及していた。藍田先生の超美技より、寉仙先生の下手うまに見せられていた。

私の家で「赤い本」と呼んでいた「書藝大観」は寉仙先生発行の競書雑誌であった。そこで述べられている先生の書論は一言も逃さないように舐めるように読んでいた。そこには王羲之があり鄭道昭良寛そして陳鴻壽がいた。王羲之の十七帖や尺牘を寉仙風に臨書したものは、その意表をつく筆意の変化に、これは良寛が混ざり込んだ表現だと見て良寛風の作品作りに没頭していた。

一方、藍田先生が鳩居堂に筆を買いに行ったら、この筆で何紹基を書けるようになったら一流になれると云われて、筆と何紹基を買って書の道に入った、という話をある本で読んで、それなら私もと何紹基を一心に学んだ。
その頃は寉仙、藍田、良寛、が制作の時のイメージで、何紹基の技術はベースになる重要なものと思いながら書をやっていた。

それから十年以上は経っていたかもしれないが、寉仙先生と何紹基がふと重なって見えた。エッ、何紹基のまんまじゃないかと、がっかりしたことを覚えている。なぜ、何紹基がいいという言葉が「書藝大観」になかったのか、と。
私も良寛経由の思い込みが強くて、よく見るとそっくりなのに気が付かなかった。面白いものである。それにしても、私淑した寉仙先生と直接指導を受けた藍田先生が大きく何紹基に関わっていたのである。何紹基に只ならぬ縁があると思った。
だが何紹基のイメージで制作したことは一度もない。

何紹基は何を書いても一貫して顔法であり、顔真卿の顔法より分かりやすく、より特徴的に表現している。そして、その造形は隷書のイメージが強い。表情のユニークさは隷書の結体から生まれて来ている。
臨書が残されている張遷碑など相当学んだであろうが、石門頌楊淮表紀に意を通じさせているのではないかと思っている。
清代の書家は金石の研究が進んでいたので、独特の書法観と造形を持っていたものが多い。その辺の所をこれから紹介してみたい。
# by mteisi | 2008-11-04 00:03 | 歴史的な作家と書
2008年11月2日
脱穀

脱穀をすませて来た。
54キロの収穫。

野良仕事の師匠の中川さんから、
脱穀機を貸してもらい、
使い方を教えてもらった。
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竹に稲の束を並べた時はタイムスリップしたようで、
大満足だった。

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小さな藁束。
アッという間に脱穀収量。
# by mteisi | 2008-11-02 21:20 | 野良しごと
2008年11月1日
手製本2

花畑公民館の子ども達は全部で9人。
書を残すための指導のテストをやっている。
興味を持ってくれるということが一番なのだが、
それがなかなか難しい。
暴力や恐怖心で押さえつけるのは論外だが、
言葉で説得するのも難しい。
基本的にご褒美はなし。
朱液で注意や〇をつけることもしていない。
手を取る指導もめったにしない。
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木村香奈恵ちゃん5年生。世話やきさんだが、書への興味は薄い。

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上手い字を書く。
何か面白いものが見つかればいいのだが。


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平嶋純子ちゃん3年生。とても楽しそうにやっている。

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絵も字も書くのが大好きで、物語も黙々と作っている。
おしゃべりも大好きな左ききの子。
# by mteisi | 2008-11-01 20:18 | 児童の指導
2008年10月30日
手製本を作ったら

手の仕事を大切にしたいと、いつも思っている。
そこで、去年の書展「もじMOJI」に児童の手製本と葉書大の作品を展示した。
思いもかけない大反響で、今回は手製本だけを募集した。
各教室の先生方の熱気が伝わってくる、興味深い展示となった。

指導方針に2本の柱がある。
一つは自由な創造力を高める。
もう一つは、上質な古典との出会いである。

この思いを実践した結果が、ここに結集した。
今年も大好評だった。

これから、私が指導した児童13人の作品を少しずつ紹介してみたい。

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展覧会での風景

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田中岳君の表紙。
花畑公民館で指導している9人のうちの、最年少の2年生。
陶印の田中岳と岳も手製。

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思いついた言葉を好きに書かせている。
まだ楽しいという気持ちはないようだ。
ただ、見る方はとても豊かな気分にしてもらえる。
# by mteisi | 2008-10-31 00:06 | 児童の指導
2008年10月28日
屈服の形

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服という字の旁は人を後ろから手で押さえる形で、
屈服する姿を表わしている。
偏の月は舟の形で、儀礼の時用いる盤を表わす。

月はお月さんの月があり、肉をあらわす月があり、舟を表わす月がある。
私の前崎の前も舟の形から出来ている。

篆書では止と舟と刀からなり、止は足を表わし、足を洗って刀で爪を切り揃えることをいう。
史記、蒙恬伝(もうてんでん)に「公旦(周公)自らその爪を揃(き)り、以って河に沈む」とあって、
爪を切ることは修拔の儀礼。その爪を河に投ずるのは、自己犠牲としての意味を持つ。としている。
白川静の「字通」から抜粋した。

殷、周の原初文字を尋ねるのはなかなか面白い。
字統」普及版は6300円で価格も手頃で使いやすいので、手に入れて遊ぶことを勧めたい。
# by mteisi | 2008-10-28 22:27 | 語源で遊ぶ
2008年10月27日


書展「一瞬」が終わった。
今回はより攻撃的に書展を遂行しようと考えた。
どうすれば多くの方が足を運んでくれるか、しっかり考え、積極的に手を打った。
季刊冊子「才」を展覧会前に制作したのも、その一つ。
果たしてどれだけ効果があったのか、数で考えれば大いに成果があったようだ。
去年が1200名今年が1300名。
前回は「アートをたずねる月」のスタンプ交換の方たちが、100名くらいはあった。
今年は参加しなかったので、実数としては200増で予想外の数だった。

私自身、会場に見えた方々に冊子を渡しながら、お話をするように心掛けた。
今までは話しかけてくる方とだけ話していたので、知らない方と話すことはあまりなかった。
いやあ、
心強い言葉を沢山いただいた。
そして、とても楽しんでいただいた。

私の「一」快心とまではいかない。まあよしとした。
1998年に一度書いて、これが二度目。
いずれまた、書いて見たい。
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# by mteisi | 2008-10-27 21:08 | 自作の書
2008年10月23日
ブリキの花入れ

手前味噌だが茶室の評判がいい。多くの方がお茶を飲んでくれている。

書はといえば、一人ひとりそれぞれ違って楽しい、との言葉をいただく。
でも、基本が出来ないとこんなふうに書いてはいけないと思ってある。
云われる意味は分かるが、それは間違っている。
手本に頼る書道教育の悪癖だろう。
真剣に古典を見、真剣に自分勝手に書けば、どうにかなる。

書は楽しく学びたい。
子ども達が作った手製本を見て、楽しそうというご意見をいただく。うれしいことだ。
だが、実際はそうとばかりはいえないかもしれない。
眉をしかめられるような書が多いことも確かだ。
私の教室の様子を見られると、子どもを預けるのに躊躇されるかもしれない。

ところで、ブリキの花入れ。
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お茶の枝を入れてみた。アクロスの紋章

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ブリキ板を折り曲げて、溶接で穴をあけただけ。切った竹を中に入れて、草花を活けてみた。

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S字に曲げただけ。黒く見えるのは炎が当たった煤のあと。稲は山の棚田で取れた稲
# by mteisi | 2008-10-23 21:04 | 展覧会
2008年10月22日
「一瞬」二日目

初日の朝会場に入ると、花がしおれていた。あわてて入れ替え。
山から切ってきた栗や山イチジクも、はっぱがくしゃくしゃ。
花は水揚げのことを知っておかないと、毎朝大忙しだ。
今日も花を持って会場へ。
花といってもたいしたものは無い。近所の空き地の水引草と猫じゃらし。

展覧会の評判はとてもいい。
ブリキの花入れも効果的で、花を選ばない。
「アクロス庵」も面白がってくれている。
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看板とブリキの花入れ。

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お茶と書をのんびり味わってもらう。

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こうしてみるとどうってないブリキ板。
# by mteisi | 2008-10-23 00:25 | 展覧会
2008年10月20日
書展「一瞬」飾り付け

毎年新たな感覚の展覧会をと考えている。

第何回福岡書芸院展では、新たなものをという意欲が湧きにくい。
そのつどタイトルを考えてきた。
最初は「響」次が 「書のある風景inアクロス」「刻む 2000展」「淡遠inアクロス」「artな書展・John Grahamと共に」「書展 of Fukuoka Syogeiin」「布と書とwith 中本扶佐子」「かな仮名Kana」「神無月の書」「古今」「楽我喜」「もじMoji」そして今回の「一瞬」。
こうして福岡書芸院展を並べてみると、その時々に求めてきた思いが蘇ってくる。

茶室を「acros庵」とした。亜の字の中に十字架を書いてアクロス。とてもとても遠い当て字。
今、書芸院の方針としてはこの遊びが旬なのだが、みんなののりは今一か。
鉄の棒と番線で形を作り「風花山叢」を壁代わりに垂らしてみた。
椅子はアフリカのもの2点と村上さんの木と鉄で出来た椅子を置いてみた。
居心地はどうか、明日が楽しみ。
ずっとは大変なので午後2時から4時まで2時間だけ、お茶を無料で提供する。

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アフリカのものは以前から気になっていて、少しずつ蒐集していた。

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今回は陰出しのみ、次回の書展「風花山叢」ではお手前のスペースも作りたいと思っている。
# by mteisi | 2008-10-20 21:33 | 展覧会
2008年10月19日
秋祭りに遭遇

明日の書展の花のことで頭が一杯。

花を取りにわが棚田へ。
ところが、ぼんやりインターを過ぎてしまった。
次のインターでUターン。
またまた今度は早く降りすぎてしまった。
いつもの道に入ろうとすると、通行止め。
祭りの行列が始まったばかり、2時間くらいかかるという。
道を教えてもらって左折すると、なんとこちらがいつもの道。
こんなの初めて。

お陰で古式床しき祭りに出会えた。
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逆光の中行列は神社へと進んでいく。

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堂々とした書。個性的ではないが、存在感がある。

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山への入口が小松の部落。その入口に桜の木と旗が立つ。

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大興善寺の入口の階段脇にも立派な旗。風の悪戯、裏を見せ。書もなかなかいいもんだ。
この階段の左側を通って棚田へと。
# by mteisi | 2008-10-20 00:59 | 歴史的な作家と書