何紹基その2
家に何紹基の作品があったのを思い出した。
父が台湾から買ってきた物でなかなかいい作品である。
何紹基は雅号を子貞という。印を見ると意匠あふれる書に比べると遊びの少ない、
典型的な秦の小篆で刻まれている。
何紹基の線条の特徴は、刻みを入れながら運筆する独特の筆法にある。
金文や石拓に見える線条が、時代の風雨や使用することでの摩滅などで凸凹が生まれる、
その表情は古色と呼ばれ独特の風趣を持つのである。
線を引く時に、ある人はその凸凹も写し取ろうと試み、ある人は引かれた時の線を思い描いて引くのである。どちらもその人の力量によって魅力的なものになっていく。
何紹基は丁寧に刻み込んでいる。その姿勢は書表現のあらゆる書体の中に現れている。
さて、我が家の何子貞は、
逆入して起筆はまろやかに表現するが、送筆部はあっさりと軽やかに運筆している。近くで見ると墨は紙背透過とはならず、極めて薄い筆触である。
だが、奥深い線に見えるのである。平べったい線を丸く見せる技がある。この技は、篆書の逆入平出法を学べば手に入る。意外と簡単に基本中の基本の運筆が学べるのである。
まあ、何紹基もその時々で、意の趣くままに書を楽しんだのであろう、講釈は後からどんなでもつけられるというものか。