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2008年11月7日
陳鴻壽

陳鴻壽は清代の人。とにかく隷書がとても面白い。
デフォルメを効かせた一字の形が実に楽しい。
隷書で作品を作ろうとは思わないのが、陳鴻壽のムードを持った隷書的作品は作ってみたいと思っている。

先日、酒のラベルの文字の依頼を受けたが、陳鴻壽を頭の片隅においてこんな形有りかいというようなものも書いてみた。ラベルになるかどうかは分からない。

陳鴻壽の作品は二玄社の中国法書選に入れられてないので、身近に学ぶということが少ない。
日本の書道界では陳鴻壽らしい作品を見たことがない。ただ、二玄社が「陳鴻壽の書法」を発行しているので、学ぶことが出来ないわけではない。
何紹基の場合はどの書にも共通した空気があるのだが、陳鴻壽は書体によって全く空気が違っている。
隷書は普通にやる曹全碑風のまろやかな逆入というものがなく、順筆でスッーと入っているものが多い。送筆部は充実させるために様々な展開をしている。筆圧をかけた躍動的なもの、波のように揺れるもの、ジワジワとズズッーと引くものと、なかなか面白い。
ところが行書となると表情が一変する。
意思的な凛とした形は、王羲之の行書表現よりは単一的ではあるが、
知的に作り上げられた造形が感性の清新さを感じさせる。
そして篆刻になると刀法様式美を追求しているように思える。
三折法といって一本の線を微妙に歪めたり、刻みを入れたりしながら表情をつけている。
仲間うちで楽しんだ刀法なのだろうが、
現代の私から見ると、なぜ、あの隷書の破天荒な造形が篆刻でも展開されないのか、不思議に思うが、遊んだ所がちがうのだから仕方がない。

陳鴻壽も歴史に名を刻んだ一人なんだが、私に書の面白さを教えてくれた一人である。
by mteisi | 2008-11-07 23:46 | 歴史的な作家と書


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