人気ブログランキング | 話題のタグを見る
開通褒斜道刻石
目を細めないと文字が見えてこない。
まるで色盲検査の絵のようだ。
風雨によって摩滅した石刻である。
だがそこに魅力を感じる人も多い。
画家井上三綱は、襖絵か屏風だったか六曲二双くらいの大作を、
この磨崖文字を素材にして絵にしていた。
書家が表そうとしないところを魅力的に表現していた。

一般には、綺麗な形以外の書の楽しみ方を知る機会はとても少ない。
誰もが受ける小学校教育では楷書以外はほとんど見せていない。
書の魅力を興味深く語る文章にもなかなか出会わない。
書に関する現代人の視野と意識が書写教育の楷書に収まってしまい、
そこから広がりを持てないでいる。
というより、書に興味を持たれていない気がする。

上手の範疇から遠いところにある「開通褒斜道刻石」。
崖に直接刻み込んでいるから、字の大きさも不揃い。
だが一字一字が四角形に収まっているので、のんびりと安定している。
開通の二文字、締まりのない形が忘れられない。
萬の字もどうしたんだと叫びたくなる。
象を手で使っている形からできた大きな爲。
真四角な空。どの字も可笑しい。
底抜けの豊かさが楽しめる。

開通褒斜道刻石_c0169176_0263321.jpg

拓本風に画面を汚してに臨書してみた。
by mteisi | 2009-04-21 00:34 | 歴史的な作家と書


<< 萊子侯刻石      隷書 >>