
心地そこないてわづらひける時に、風にあたらじとて、おろしこめてのみ侍りけるあいだに、をれるさくらのちりがたになりけるを見てよめる
藤原よるかの朝臣
たれこめて 春のゆくへも しらぬまに
まちし桜も うつろひにけり
病気にかかって悩んでいたときに、風にあたるまいと思って、
簾(すだれ)を垂れさげて引きこもっていた間に、
折とって花瓶にさしてあった桜の花が散りそうになってしまったのを見てよんだ歌。
部屋の中に引き籠もっていて春のすぎるのも知らないでいた間に、
早くから咲くのを楽しみに待っていた桜の花も、はや散りがたになってしまったことよ。