「
風花山叢」の茶会が縁で、お誘いいただいた粥茶会。
何も知らないのに正客になって、図々しく出かけていった。
造成された住宅の中の一画でとくに趣のある場所ではなかった。
ところが「雀居」へ一歩踏み込むと空気が一変した。
無造作に並べられた踏み石の趣きだった。
玄関に入るとさりげない設え
ほっとするが、身も引きしまる。
狭い控えの間で身支度をととのえ、
次の部屋へと移動する。

薄暗い狭い部屋の床には不昧公の軸がかかっていた。
明かりがともされ、この部屋でお粥をいただく。
炉が切ってありスッキリとした鉄の自在に
注ぎ口のついたキリリとした釜が掛けてある。
新しい作家の仕事とのこと、とても凜とした羽釜作りだった。
その釜に米を流しこまれ、お粥は作られた。


向こう付けに鯛の刺身が盛られ、
ちりめん山椒と昆布の佃煮をおかずに最初の一膳。
次に炭であわびがが焼かれて二膳目。
お漬け物で三膳目をいただく。
アルデンテからとろとろの粥と、
三膳のお粥がとても贅沢な時を味あわせてくれた。
玄関をでて待合いに腰掛けて待っていると、
しばらくしてやわらかい銅鑼の音が響く、
その音でご亭主のお出ましを待つ。
緊張感が走る。

軽いあいさつの後茶室へ。

つくばいで手を清めにじり口から中へはいる。
現れた軸の風情は簡潔な豊かさで「入茶」と書かれている。
無学の落款に無学祖元だと思った。このような書も書くのかと思った。
記憶している書とは空気が違った。
無学宗衍(むがくそうえん)の書ということだった。
カメラの使い方が解らずフラッシュがたけず
書を見てもらえないのが残念。
入の字の意匠が面白くハッとさせられる魅力がある。
軸の仕立ても素晴らしい。
ベージュ系の彩度の違う二種類の布をさりげなく使い、
一文字の竹屋の金が鮮やかだった。
明かりが吟味された時の移ろいは新鮮。
お濃い茶をいただく濃厚な渋みが深い味わいに感じた。
お菓子をいただきながらお薄をもらう。
私の好みだろうと山茶碗で点ててもらい、
至福の一時だった。

にじり口から退出し庭でご亭主にごあいさつして、
初の茶会は終わった。
これからお茶のことも見つめながら、
書の楽しさを伝えたいと思った。