述懐
文武天皇
年雖足戴冕
智不敢垂裳
朕常夙夜念
何以拙心匡
猶不師往古
何救元首望
然毋三絶務
且欲望短章
懐ひを述ぶ
文武天皇
年 冕(べん)を戴くにたるといへども
智 敢へて裳を垂れず
朕(われ)つねに夙夜に念ふ
なにをもってか拙心を匡(ただ)さん
なほ往古を師とせずんば
なんぞ元首の望みを救わん
しかも三絶の務なし
しばらく短章に望まんとほっす
年齢は冠を戴くのに十分であるけれども
能力は官服を飾るにあたいしない
わたしはいつも夜遅くまで考え込んでいる
どうしたら未熟な心を正していけるだろうかと
過ぎた昔の人を師としなったならば
なんで君主としての理想の政治ができようか
それなのに学に技芸に励むことをしていない
ともあれ五言の詩をもって心情を表そう
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古今和歌集690 >>
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