遊覧山水
正四位下治部卿犬上王
蹔以三餘暇 遊息揺池浜 吹台哢鶯始 桂庭舞蝶新
沐鳧双廻岸 窺鷺獨銜鱗 雲罍酌烟霞 花藻誦英俊
留連仁智間 縦賞如談倫 雖尽林池楽 未翫此芳春
山水を遊覧す
蹔く三餘の暇をもって 遊息す揺池の浜 吹台哢鶯始め 桂庭舞蝶新たなり
沐鳧双んで岸を廻り 窺鷺ひとり鱗を銜む 雲罍烟霞を酌み 花藻英俊を誦す
留連す仁智の間 縦賞倫と談ずるがごとし 林池の楽しみを尽すといへども いまだこの芳春を翫ばず
たまたま休暇の時をえて、御苑のほとりを遊覧した。楼台には鶯がさえずり
桂花の下、蝶がひらひら舞っている。水に潜む鳧はつがいで岸辺を泳ぎ
魚をねらう鷺は口に獲物をくわえている。雷文模様の酒樽から春の趣を酌み
花・水草のあでやかな詩文を口ずさむ。山川の間の足をとどめ
思う存分鑑賞し議論しあう。林地の自然美に楽しみを尽くすものの
まだまだ賞美しつくせるものではない