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古今和歌集1006
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am7:09
肌寒くうすい空。

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七条のきさきうせたまひにけるのちによめる
 伊勢

おきつなみ  あれのみまさる  宮のうちは  としへてすみし
いせのあまも 舟ながしたる   心地して   よらむ方なく
かなしきに  淚の色の     くれなゐは  我らがなかの
時雨にて   秋のもみぢと   人々は    おのがちりぢり
わかれなば  たのむかげなく  なりはてて  とまる物とは
花すすき   きみなき庭に   むれたちて  そらをまねかば
はつかりの  なき渡りつつ   よそにこそ見め

いよいよ荒れてゆくこの御殿の中には、長い年月の間住んでいた伊勢のあま(私)も、頼りにしていた舟を流し失ったような気がし、身を寄せようと思うところもなく悲しいので、流す涙もつきて、紅の淚とあっているのは、悲嘆に暮れて私どもが流す涙の時雨であり、秋の紅葉の散るように、人々がそれぞれ散り散りに別れてしまうならば、頼むよすがもすっかりなくなってしまい、ただ、あとに残りとどまるものとしては花すすきだけが、主人のいなくなった庭に群がり立つばかりで、空に向かってまねくならば、たまたま飛び行く初雁が、よそながらこの御殿をながめるであろうか(他にはよそながでも見る人もなくなってしまうであろう)。
by mteisi | 2013-03-07 07:33 | 古今和歌集


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