宴長王宅
従四位上治部卿境部王
新年寒気尽 上月淑光軽 送雪梅花笑 含霞竹葉清
歌是飛塵曲 絃即激流声 欲知今日賞 咸有不帰情
長王宅に宴す
新年寒気尽き 上月淑光軽し 雪を送って梅花笑み 霞を含んで竹葉清し
歌はこれ飛塵の曲 絃はすなはち激流の声 今日の賞を知らんと欲せば みな不帰の情あり
新年を迎えて寒気も和らぎ、正月の和やかな光が心地よい。雪もとけ梅花はほころび、霞に濡れた竹の葉も清らか。歌は梁の塵を舞わせるほどの美声で、伴奏はほとばしる清水ののような急調子。宴席の今日の興趣は問うまでも事、だれも帰宅を忘れているではないか。