初秋於長王宅宴新羅客
皇太子学士正六位上調忌寸古麻呂(しらべのいみきこまろ)
一面金蘭席 三秋風月時 琴樽叶幽賞 文華叙離思
人含大王徳 地若小山基 江海波潮静 披霧豈難期
初秋長王の宅において新羅の客を宴す
一面金蘭の席 三秋風月の時 琴樽幽賞に叶 文華離思を叙ぶ
人な大王の徳を含み 地な小山の基のごとし 江海波潮静かなり 霧を披くことあに期しがたからんや
初対面でありながら意気投合の宴席であり、時は秋、風月愛賞この上もない時節。送別の酒も琴も奥深い眺めにかない、華麗な詩文は離別の思いを色濃くする。王は大王となられる高徳をもたれ、地は淮南王の小山の麓のような趣き。大河の波、海の潮も静かであり、霧も晴れ、無事にご帰還なされよう。