秋日於長王宅宴新羅客
正六位上刀利宣令
玉燭調秋序 金風扇月幃 新知未幾日 送別何依々
山際愁雲断 人前楽緒稀 相顧鳴鹿爵 相送使人帰
秋日長王の宅において新羅の客を宴す
玉燭秋序を調べ 金風月幃を扇ぐ 新知いまだ幾日ならず 送別何ぞ依々たる
山際愁雲断え 人前楽緒稀なり 相顧る鳴鹿の爵 相送る使人の帰るを
四時の気が移って秋の気を調え、秋風は月に透ける羅(うすぎぬ)を扇いでいる。君と知りあってから日にちも浅いが、離別がかくも耐えがたいとは、山ぎわの愁わしげな雲は流れ去ったが、人びとには沈む思いがこみあげるばかり。鳴鹿の詩を歌い、めぐる盃を受けつつ、新羅に帰る使者をことば好くなに送った。