初春於作宝楼置酒
長屋王
景麗全谷室 年開積草春 松烟双吐翠 桜柳分含新
嶺高闇雲路 魚驚乱藻浜 激泉移舞袖 流声韵松筠
初春作宝楼において置酒す
景は麗し全谷の室 年は開く積草の春 松烟双びて翠を吐き 桜柳分って新を含む
嶺は高し闇雲の路 魚は驚く乱藻の浜 激泉舞袖を移せば 流声松筠に韵く
今、金谷の室の景色は麗しく、年は春、草は重なり繁っている。松も霞もともに緑にけぶり、桜や柳もそれぞれ新鮮である。峯は暗くたなびく雲の彼方に聳え、魚は重なりただよう藻の中に跳る。激しく湧く泉のほとり袖を翻すと、水の調べは松と竹に調和する。