和藤原大政遊吉野川之作
従五位下陰陽兼皇后宮亮大津連首
地是幽居宅 山惟帝者仁 潺湲浸石浪 雑沓応琴鱗
虚懐対林野 陶性在風煙 欲知歓宴曲 満酌自忘塵
藤原の大政吉野川に遊ぶの作に和す
地はこれ幽居の宅 山はこれ帝者の仁 潺湲石を浸すの浪 雑沓に応ずるの鱗
懐を虚にして林野に対し 性を陶して風煙にあり 歓宴の曲を知らんと欲せば 満酌おのづから塵を忘る
土地は閑寂かくれ住むによく、山は天子の仁徳そのものの姿。水はとうとうと流れて石を没し、群れを泳ぐ魚族はことのに応えて跳る。山林に高雅な思いをむすび、風や霞に心を清め陶冶する。酒宴の趣を知りたいのなら、満酌陶然のさまを見ればいい。