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懐風藻90
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秋日於左僕射長王宅宴
 正三位式部卿藤原宇合

帝里烟雲乗季月 王家山水送秋光 霑蘭白露未催臭 泛菊丹霞自有芳
石壁蘿衣猶自短 山扉松蓋埋然長 遨遊已得攀竜鳳 大隠何用覓仙場

秋日於左僕射長王の宅において宴す
 
帝里の烟雲季月に乗ず 王家の山水秋光を送る 蘭を霑す白露いまだ臭を催さず 菊に泛ぶ丹霞おもずから芳あり
石壁の蘿衣なほおのづから短く 山扉の松蓋埋んでしかも長し 遨遊すでに竜鳳に攀づるをえたり 大隠なんぞ用ゐむ仙場を覓むるを

帝都の空は晩秋の雲がたなびき、王の邸宅は秋の光で静かである。蘭をうるおす白露は香りを含んでいないが、菊にただよう赤い霞は自然の香りがある。石垣のさるおがせはまだ短く、山荘の門をおおう松はこんもりとして丈高い。宴席に列して十分に楽しませていただいた。市の隠者はいまさら仙人の住居を求める要はない。
by mteisi | 2013-04-30 08:11 | 懐風藻


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