
奉和藤太政佳野之作
正五位下中宮少輔葛井連広成
物外囂塵遠 山中幽隠親 笛浦棲丹鳳 琴淵躍錦鱗
月後楓声落 風前松響陳 開仁対山路 猟智賞河津
奉和藤太政佳野之作
物外囂塵遠く 山中幽隠親し 笛浦丹鳳を棲ましめ 琴淵錦鱗を躍らしめる
月後楓声落ち 風前松響陳ぶ 仁を開いて山路に対し 智を猟して河津を賞す
世事を忘れんと俗塵から遠く離れて、吉野の山あいにひそかに生活している。ここ吉野川の水辺には鳳凰が棲みなれ、淵の群魚は時折り錦鱗魚紋を描き出す。月は山の端にかくれ楓には風音もなく、時おり松吹く音をかすかに聞くばかり。山のふところに入ろうと山路をたどり、川の妙趣にひたろうと岸辺を逍遙する。