秋下荊門
李白
霜落荊門江樹空 布帆無恙拄秋風 此行不爲鱸魚鱠 自愛名山入剡中
秋荊門を下る
李白 りはく
霜落ちて荊門江樹空し 布帆恙無く秋風に拄く 此の行は鱸魚鱠の爲ならず 自ら名山を愛して剡中に入る
もう霜がおりて荊門の地方は岸辺の木々の葉が散ってしまった。旅人も無事、景気よく布帆に秋風をはらませて安穏に江面をすべってゆく。今度の旅は呉の地方へ向かって行くのだが、その昔、晋の張翰のように鱸魚のなますが食いたいなどという食い意地のはったものではない。自分は名山を愛するので、それを尋ねようとおもって会稽剡溪の奥へ分け入ろうとしている。