送別魏二
王昌齢
酔別江樓橘柚香 江風引雨入船涼 億君遥在湘山月 秋聽清猿夢裏長
魏二に送別す
王昌齢 おうしようれい
酔うた江樓に別るれば橘柚香し 江風雨を引いて船に入って涼し がふ君は遥に湘山の月に在って 清猿を愁へ聽いて夢裏に長からん
長江ぞいの髙樓の上で、わかれの酒をくみかわした。花たちばなのかおりが空中にただようて、秋の気が深い。川のかぜが雨を吹きつけ、雨のつぶが船のなかにはいってきて涼しくつめたい。おもえば、君は遠く去って行って潚湘のほとりに泊まることだろうが、洞庭湖の中心にある君山の月を眺めて、ゆううつなおもいのうちに猿の鋭く澄んだ声を聴きながら、うつらうつらとまどろんでいると、夢のなかまでそのかなしげな声がつづくことだろう。それを思うと、このわかれはいよいよつらくなる。