隣曲有未飯、被追入郭者、憫然有作
陸游
舂得香秔摘綠葵 縣符急急不容炊 君王日御金華殿 誰誦周家七月詩
隣曲に未飯せずして、追せられて郭に入る者有り、憫然として作有り
陸游
香秔を舂き得て綠葵を摘む 縣符急急として炊ぐを容れず 君王日に金華殿に御するも 誰か誦せん周家七月の詩
この農民は香秔を臼でつき、緑の葵を摘んだが、県の役所から出された命令書は急に処置せよとのことで、炊事する余裕もあたえない。みかどには、日ごとに金華殿へ出御あそばされるはずだが、漢の成帝が経書を聴講された例にならって、周の帝室でうたわれた「七月」の詩を吟誦してお聞かせする人は、農民の労苦を訴えてくれる人は一人もいないのか。