藤原宮御井歌
八隅知之 和期大王 高照 日之皇子 麁妙乃 藤井我原尒 大御門 始賜而 埴安乃 堤上尒 在立之 見之賜者 日本乃 青香具山者 日經乃 大御門尒 春山跡 之美佐備立有 畝火乃 此美豆山者 日緯能 大御門尒 弥豆山跡 山佐備伊座 耳爲之 青菅山者 背友乃 大御門尒 宜名倍 神佐備立有 名細 吉野乃山者 影友乃 大御門從 雲居尒曾 遠久有家留 高知也 天之御蔭 天知也 日御影乃 水許曾波 常尒有米 御井之清水
やすみしし わご大君 高照らす 日の皇子 荒たへの 藤井が原に 大御門 はじめたまひて 埴安の 堤の上に あり立たし 見したまへば 大和の 青香具山に 日の經の 大御門に 青山と しみさび立てり 畝傍の この瑞山は 日の緯の 大御門に みづ山と 山さびいます 耳成の 青菅山は 背面の 大御門は よろしなべ 神さび立てり 名くはしき 吉野の山は 影面の 大御門ゆ 雲居にぞ 遠くありける 高知るや 天のみかげ 天知るや 日のみかげの 水こそは とこしへならめ 御井のま清水
澤瀉久孝著「万葉集注釈」1より