
五之一
惠子、謂荘子曰、吾有大樹、人謂之樗、其大本擁腫而不中繩墨、其小枝巻曲而不中規矩、立之塗匠者不顧、今、子之言大而無用、衆所同去也、
惠子、荘子に謂いて曰わく、吾に大樹あり、人これを樗(ちよ)と謂う。其の大本は擁腫して繩墨に中(あた)らず、其の小枝は巻曲して規矩に中(あた)らず。これを塗(みち)の立つるも、匠者(しようしや)顧みず。今、子の言は大にして無用、衆の同(とも)に去(す)つる所なり。
恵子が荘子にむかって話した、「私のところに大木があって、人々はそれを樗(おうち)とよんでいますが、その幹はこぶだらけであって直線はひけず、その小枝は曲がりくねっていて、コンパスや定規は使えないということで、道ばたに立てておいても大工はふりかえりもしません。ところで、あなたの話も大きすぎて用いようがないから、人々みんなにそっぽを向かれるのですね。」