三之三
物無非彼、物無非是、而彼則不見、自知則知之、故曰、彼出於昰、昰亦因彼、彼是方栖之説也、雖然方生方死、方死方生、

物は彼に非ざるは無く、物は是に非ざるは無し。自ら彼とすることは則ち見えず、自ら知ることは則ちこれを知る。故に曰わく、彼は昰より出で、昰れも亦た彼に因ると。彼と是れと方に生ずるの説なり。然りと雖ども方に生ずれば方に死し、方に死すれば方に生ず。

物は彼(あれ)でないものはないし、また物は此でないものもない。［此方からすればすべてが彼、彼方からすればすべてが此である。］自分で自分を彼とすることは分からないが、自分で自分を此としてわきまえることは分かる者である。だから「彼は此から出てくるし、此もまた彼によってあらわれる、」という。彼と此とは［あの恵施の説く］方生の説（ーちょうど一しょに生まれるという説）である。けれども。［恵施も説くように］ちょうど生まれることはちょうど死ぬことであり、死ぬことはまたそのまま生まれることである。