四之七
古之人、其知有所至矣、悪乎至、有以爲未始有物者、至矣盡矣、不可以加矣、其次以爲有物矣、而未始有封也、其次以爲封焉、而未始有昰非也、
古えの、其の知至る所あり。悪(いず)くにか至る。以て未だ始めより物あらずと為す者あり。至れり尽くせり、加うべからず。其の次は以て物ありと為す。而も未だ始めより封(ほう・界)あらざるなり。其の次は以て封ありと為す、而も未だ始めより是非あらざるなり。
昔の人は、その英智に最高のゆきついた境地があった。そのゆきついたところはどこか。もともと物などはないと考える[無の]立場である。至高であり完全であって、それ以上のことはない。その次の境地は、物があるとは考えるが、そこに境地を設けない[物我一如の]立場である。その次の境地は、境界があるとは考えるが、そこに善し悪しの判断を設けない[等価値観の]立場である。[以上の三つの立場が、ていどの差はありながら、万物斉同の真の道にかなったものである。]