五之三
天下、莫大於秋豪之末、而大山爲小、莫壽乎殤子、而彭祖爲夭、天地與我並生、而萬物與我爲一、既已爲一矣、且得有言乎、既已謂之一矣、且得無言乎、
天下、秋豪(毫)の末より大なるは莫く、而して大(泰)山を小と為す。殤子より寿なるは莫く、而して彭祖を夭を為す。天地も我れと並び生じ、而して万物も我と一たり。既已(すで)に一たり、且(はた)言あるを得んや。既已にこれを一と謂う。且(はた)言なきを得ん。
この世界で最も大きいものは秋の動物の毛先きであって、[世間の人が巨大だと考えている]泰山は小さいものである。また最も寿命の長いものは若死にし子供であって、[世間の人が長寿だと考えている]彭祖は短命な人である。[相対にとらわれないこうした立場からすると、]天地の長久もわが生命とともにあり、万物の多様もわが存在と一体である。すでに一体であるからには、さらにほかに言葉というものがありえようか。しかしすでにそれを一体だといったからには、言葉がないとして済まされようか。