
五之三
古者謂之遁天之刑、適來夫子時也、適去夫子順也、安時而處順、哀樂不能人也、古者謂是帝之縣解、
古者は、これを天を遁るるの刑を謂えり。適々(たまたま)来たるは夫子の時なり、適々去るは夫子の順なり。時に安んじて順に処れば、哀楽も入る能わず。古者は是れを帝の県戒と謂えりと。
むかしの人は、こういうのを遁天の刑ー自然の道理からはずれる罪とよんだ。あの先生がたまたまこの世にやって来たのは、生まれるべき時にめぐりあっただけのことだし、あの先生がたまたまこの世を去ってゆくのも、死すべき道理に従ったまでである。めぐりあわせた時のままに身をまかせて自然の道理に従っていくということなら、[生まれたからといって喜ぶこともなく、死んだからといって悲しむこともなく、]喜びや悲しみの感情が入りこむ余地はない。こうした境地を、むかしの人は帝の県解(—すなわち絶対者による束縛からの解放)とよんだのだ。」