四之一
匠石脂齊、至乎曲轅、見櫟社樹、其大蔽數千牛、絜之百圍、其高臨山、十仞而後有枝、其可以爲舟者、旁十數、觀者如市、匠伯不輟、
匠石、斉に之き、曲轅に至り、櫟社の樹を見る。其の大きさ数千牛を蔽い、これを絜(はか)れば百囲なり。その高きことは山に臨み、十仞にして而る後に枝あり。其の以て舟を為(つく)るべき者、旁らに十数なり。観る者市の如きも、匠伯顧みず、遂に行きて輟(や)めず。
大工の棟梁の石が、斉の国を旅行して曲轅という土地にはいったとき、「その土地神を祭った]櫟社の神木である櫟の大木をみた。その大きさは数千頭の牛をおおいかくすほどで、幹の太さは百かかえもあり、その高さは山を見下ろしていて、地上から七、八十尺もあるとこからはじめて枝がでている。それも舟が作れるほどの大きい枝が幾十本とはり出ているのだ、見物人が集まって市場のようなにぎやかさであったが、棟梁は見かえりもせず、そのまま足をはこんで通りすぎた。