六之一
宋有荊氏者、宜楸・柏・桑、其拱把而上者、求狙猴之杙者斬之、三圍四圍、求高名麗者斬之、七圍八圍、貴人富商之家、求樿傍斬之、
宋に荊氏なる者あり、楸・柏・桑に宜し。其の抗把よりして上なる者は、狙猴の杙を求むる者はこれを斬り。三囲四囲なるは、高名の麗(むなぎ)を求むる者これを斬り、七囲八囲なるは、貴人富豪の家、樿傍をもとむる者はこれを斬る。
宋の国に荊氏という土地があって、楸(ひつぎ)と柏と桑の木がよく育つところである。ところがこれらの木は、一握りか二握り以上になると、猿のとまり木を求める者がそれを伐りとり、三かかえ四かかえになると、広壮な家の棟木を求める者がそれを伐りとり、七かかえ八かかえにもなると、棺桶用の一枚板を求める貴人は富商の家でそれを伐りとってしまう。