一之八
而況官天地府萬物、直寓六骸象耳目、一知之所而心未嘗死者乎、彼且擇日而登假、人則從是也、彼且何肯以物爲事乎、
而るを況んや天地を官し万物を府(おさ)め、直ちに六骸を寓とし耳目を象とし、知の知る所一にして心未だ嘗て死せざる者をや、彼且(は)た日を択びて登仮し、人則ち是れに従わん。彼且た何ぞ肯えて物を以て事と為さんかと。
ましてや、天地を意のままにあつかい、万物をわがものとして、直接わが形骸を仮りの宿とし、耳目の感覚をうたかたのものとし、あらゆる知的認識を統一づけて、精神的に死を超越している者では、なおさら何をびくびくすることがあろうか。あの人はそのうち吉日を選んで昇天するであろうが、人々の方ではそこまでもついていこうとするであろう。世間の人々や物ごとに気をひかれたりすることを、あの人がどうしてするものか。」