二之二
人特以有君爲愈乎己、而身猶死之、而況其眞乎、泉涸、魚相與處於陸、相呴以濕、相瀉以沫、不如相忘於江湖、
人は特(た)だ有君を以て己に愈(まさ)ると為して、身は猶おこれに死す。而るを況んや其の真なるをや。泉涸れて、魚相い与(とも)に陸に処(お)り相い呴(ふ)くに湿を以て瀉(うるお)すに沫を以てするは、江湖に相い忘るるに如かず。
人は自分の君主でさえ自分以上の人間だと考えて、そのために命を投げ出すのだから、まして万物を支配する真実なるものに従うのは当然であろう。泉の水がかれて、魚が干上がった土の植えに集まり、たがいに湿った息を吹きかけあい、あぶくで濡らしあうというのは、[豊かな水をたたえた]大河や湖水の中にいて、おたがいの存在を忘れているのには及ばない。