五之十一
壺子曰、郷吾示之以未始出吾宗、吾與之虚而委蛇、不知其誰何、因以爲弟靡、因以爲波随、故逃也、然後列子自以爲未始學而歸、
壺子曰く、郷には吾れこれに示すに未だ始めより吾が宗を出でざる以てせり。吾れこれを虚として委蛇し、その誰何なるを知らず。因りて以て弟靡を為し、因りて以て波随を為す。故に逃れしなりと。
壺子はいった、「さきほどは、わしはあれにわしの本質そのものの相を見せてやったのだ。わしは自分をむなしくして周囲のままに従い、あいてが何ものであるかを考えず、そのままになびき、そのままただよった。だから、あれは逃げだしたのだ。」