
一之十二
故馬之知而態至盗者、伯樂之罪也、夫赫胥氏之時、民居不知所爲、行不知所之、含哺而熙、鼓腹而遊、民態以此矣、
故に馬の知の而く態して盗に至る者は、伯楽の罪なり。
夫れ赫胥氏の時、民は居るも為す所を知らず、行くも之く所を知らず、哺を含みて熙しみ、腹を鼓ちて遊ぶ。民の能は此に以まる。
だから馬がずるがしこいことをして泥棒までするほどの知識を持つようになったのは、[野生の馬を調教しはじめた]伯楽の罪である。
[それと同じこと、]大昔の赫胥氏の時代には、民衆は平生の生活でもことさらな仕事をしようとは思わず、外に出かけてもこれという行き先をもたず、食べものをたらふく食べてたのしみ、腹つづみをうって遊んでいた。民衆のできることは[もともと]これぐらいのものであった。