大伴家持攀橘花贈坂上大嬢歌一首
伊加登伊可等 有吾屋前尒 百枝刺 於布流橘 玉尒貫 五月乎近美 安要奴我尒 花咲尒家里 朝尒食尒 出見毎 氣緒尒 吾念妹尒 銅鏡 清月夜尒 直一眼 令覩麻而尒波 落許須奈 由米登云管 幾許 吾守物乎 宇礼多伎也 志許霍公鳥 曉之 裏悲尒 雖追雖追 尚來鳴而 徒 地尒令散者 爲便乎奈美 攀而手折都 見末世吾妹兒
いかといかと ある吾がやどに 百枝さし 生ふる橘 玉に貫く 五月を近み あえぬがに 花咲きにけり 朝に日に 出で見る毎に 氣の緒に 吾が思ふ妹に まそ鏡 清き月夜に ただ一目 見する迄には 散りこすな ゆめと云ひつつ ここだくも 吾が守るものを うれたきや しこ霍公鳥 曉の うら悲しきに 道へど道へど なほし來鳴きて いたづらに 地に散らせば すべを無み 攀じて手折りつ 見ませ吾妹子