人気ブログランキング | 話題のタグを見る
口・サイを持つ文字
口・サイを持つ文字_c0169176_10054368.jpg
口は目鼻の口ではなく、
神への祈りの文である祝詞を入れる器の形。
これが新説の白川学の主張。
これで語源を見直すと実に分かりやすい。

まずは舎、
今は中が吉になっているが、
本来は下に突き抜ける舍。
私達は校舎の学び舎だが、
本は捨てるの初文。
長い辛(針器)でサイを突き刺し、
祈りの働きを傷つけ、
祈り効果をすてさせることを、
舍という。
舍は「すてる」の意味となる。
今の舎は針がサイに届いてなく、
本来の字義がなくなっている。

次ぎは告。
もとの字は上を牛に作り、
木の小枝に口をつける形。
木の小枝にサイをつけて、
神前に掲げ、
神に告祈ることをいう。
漢の時代の許慎が書いた、
字典の[説文]には、
字の上の半分は牛の角であるとみて、
牛が人になにかを告げるとき、
橫木をつけた角で人に
触れるのであるとしている。
だが牛はそのようなことはしない。
告はもと神に「いのる」の意味であったが、
のち人に訴える「つげる」の意味となる。

古は、
十と口とを組み合わせた形。
十は長方形の盾の干を省略した形。
サイの上に聖器の干を置いて、
これを守り、
祈りの効果を長い間保たせることを古といい、
「ふるい、むかし、いにしえ」の意味となる。
[説文]には十人がそれぞれ
伝えて来たとしている。

さて吉、
サイのうえに士を置いている。
士は小さな鉞の頭部を下に向けた形で、
鉞は邪悪ものを追い払う力を持っていて、
サイの中の神への祈りを守り、
祈りの効果が持続し、
祈りが実現して幸せになり、
めでたくなる。
吉には「よい、しあわせ、めでたい」
の意がある。

最後は害。
もとの字は中が丰で、
把手のついた大きな針と
サイの組合わせ。
大きな針で口を突き破り、
その祈りの効果を傷つけ失わせ、
祈りが実現するのをじゃまするのが、
害であるから、
害には
「きずつける、じゃまする、そこなう」
の意味があり、
そこなうことで「わざわい」が生まれる。
害も今の字は口に針が届いていない。
書きやすく簡単にすることで、
字義を失った文字は多い。

今回は白川静の「常用字解」からとった。


by mteisi | 2020-05-14 11:56 | 白川静考


<< 蘇東坡149      朝歌5月14日 >>