
五之五
泣涕沾襟、以告壺子、壺子曰、郷吾示之以地文、萌乎不震不止、是始見吾杜徳機也、甞又與來、
列子入り、泣涕して襟を沾し、以て壺子に告ぐ。壺子曰く、郷(さき)には吾れこれに示すに地文を以てせり。萌乎として震(うご)かず止まらず。是れ殆ど吾が杜徳機を見たるなり。甞(こころ)みに又た与に来たれと。
列子は室内にはいると、涙で襟を濡らしながら、そのことを壺子に告げた。すると壺子はいった、「さきほどは、わしはあれに地文つまりだ大地のかたちの相をみせてやったのだ。腑ぬけのようにして動くでもなければ止まるでもない[というかたちだ]。あいつは恐らくわしの杜徳機つまり徳をふさぎとめる働きを見たんだよ。ためしにもう一度つれて来るがよい。」