一之七
夫至徳之世、同與禽獸居、族與萬物並、惡乎知君子小人哉、同乎无知、其徳不離、同乎无欲、是謂素樸、素樸而民性得矣、
夫れ至徳の世は、同じく禽獸と居り、族まりて万物と並ぶ。惡くんぞ君子と小人とを知らんや。同乎として無知なり、其の徳離れず。同乎として無欲なり、是れを素樸と謂う。素樸にして民性得らる。
いったい、最高の徳が行われた世では、人々は鳥や獣といっしょに雑居し、万物といっしょに区別なく住んでいた。どうして君子と小人との差別などわきまえようか。ぼんやりとして知識もなく、その本来の持ちまえから離れることがなかった。ぼんやりとして欲望もなく、これこそ素朴(すなわち樸のきじのまま)というものであった。素朴であってこそ、民衆の自然な生まれつきも完全であった。